まち・土地・建築のRISM 近松です。
本日は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」・いわゆる空き家法についてお伝えしたいと思います。
空き家法は平成27年5月に施行され、その8年後の令和5年12月に改正が行われました。
まずは、空き家法が施行された背景について。
近年の人口減少により、年を追うごとに使用されなくなった空き家が増加しています。
総務省による「住宅・土地統計調査」によると、令和5年10月現在における全国の空き家数は約900万戸と、5年前に行われれた前回調査である平成30年から約51万戸増加し、総住宅数に占める割合は約14%となりました。都道府県別に見た場合、ワーストは和歌山県と徳島県が同率で21.2%と、5軒に1軒は空き家という状態です。和歌山県と徳島県を含めた6都道府県において空き家率が20%を超えています。私が住む岐阜県の空き家率は16%でした。
このように年々増えていく空き家ですが、そのうち適切な管理が行われてていない空き家の中には、倒壊の危険性があったり、公衆衛生を悪化させたり、街並みの景観を阻害したりなどの問題を生じ、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものがあります。
たとえ倒壊の危険があるような空き家でも、所有者の特定ができない場合や、行政から改善勧告を受けた所有者がそれに従わない場合には、危険な状態で放置されたままとなり、周辺の住民に不安を与えていました。
このような問題を背景にして、平成27年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
空き家の所有者に直接的に関係する部分を抜粋した概要は下記のとおりです。
1.空き家等の所有者の責務
・空き家の所有者(または管理者)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空き家に関する施策に協力するよう努めなければならない。
2.市町村長による空き家などの調査
・市町村長は、その市町村内にある空き家の所在及びその空き家の所有者を把握するための調査、その他空き家等に関して必要な調査を行うことができる。
・市町村長は、必要がある場合には、市町村の職員などに、空家に立ち入って調査をさせることができる。(調査の5日前までに、所有者にその旨を通知しなければならない。立入調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、二十万円以下の過料に処せられる。)
3.適切な管理が行われていない空き家の所有者に対する措置
① 市町村長は、そのまま放置されれば特定空家等※になるおそれのある空き家について、その所有者に対して改善の指導をすることができる。
② 市町村長は、所有者に指導をしたあとも状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれが大きいときは、修繕、立木竹の伐採その他の必要な具体的な措置について勧告することができる。
③ 市町村長は、勧告を受けた所有者が正当な理由がないのにその措置をとらなかった場合、特に必要があるときは、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。(市町村長の命令に違反した者は五十万円以下の過料に処せられる。)
④ 市町村長は、所有者が命じた措置を行わないときなどは、所有者に代わりその措置を行い、または第三者に委任することができる。(行政代執行法による。行政代執行の費用は所有者に請求される。)
⑤ 市町村長は、③の命令をすべき所有者を知ることができなかった場合にも、所有者に代わりその措置を行い、または第三者に委任することができる。この場合においては、その措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。(この場合も④と同様に行政代執行の費用は所有者に請求される。)
※特定空家等
「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
この概要から分かるように、空き家に対する行政指導に従わず放置すると、過料を科されたり撤去費用を徴収されたりと所有者は金銭的な負担を強いられることとなります。また、次に示すように、税制上の負担も増える可能性があります。
土地建物には、市町村により固定資産税が課せられています。
土地の上に居住用建物が現存する住宅用地については、下表のように、通常の固定資産税に対して税額が軽減されています。
土地面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
小規模住宅用地 (200㎡までの部分) | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
一般住宅用地 (200㎡を超える部分) | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
小規模住宅用地の場合には、固定資産税が6分の1に軽減されており、面積が大きかったり市街地にあったりする評価額が高い土地においては、かなりの金額が免除されていることになります。
ところが、この土地に建つ空き家が前述の特定空家等に指定され、改善の指導をされたにも関わらず放置などした結果、必要な措置を空き家を修繕もしくは除去するように勧告を受けた場合には、翌年からこの軽減が受けられなくなります。
一方、特定空き家に指定される前に空き家を解体して更地にした場合でも、居住用建物が無くなることにより、同様に軽減を受けられなくなります。
その代わりの優遇特例が用意されており、例えば、土地を売却した場合に課せられる譲渡所得税を計算する際に、売却金額から3,000万円を限度に控除できる特例があります。ただし、種々の条件があるため全ての空き家付きの土地に適用されるわけではないので注意が必要です。
適切な税制の適用については個別の条件で異なりますので、税制のプロである税理士への相談・依頼が必要です。
最近では、産業廃棄物、特にアスベストの処分費用が高くなる傾向が続いており、建築の撤去費用が年を追うごとに増加しています。
解体費用を抑えるため早期に空き家の撤去をしたいところですが、高額な解体費を支出しても、すぐに売却ができるとは限らないジレンマがあります。
ひとつの解決策としては、建物撤去費用を売主負担とする条件付きで現状のまま買主を募集する方法があります。
最近ではそのような売却物件も増えているので、数年前からみると特殊な売却方法ではなくなってきています。
その他、ケースバイケースで解決策がありますので、まずは宅建協会などが主催する不動産の無料相談会などで不動産のプロご相談されてはいかがでしょうか。
以上、本日は空き家法についてお伝えさせていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
まち・土地・建築のRISM
近松 慶孝